「福島には世界に誇れる、素晴らしいバラ園があった」
広大な敷地に750 種類のバラが咲き誇り、年間5 万人の来園者に愛された福島県「双葉ばら園」。本書には、かつての瑞々しい美しさを伝える写真、2011年3 月11日以降その姿を変えてしまった花園の写真と共に、「双葉ばら園」園主の岡田勝秀さんの開園から3.11、そして今に至る物語が綴られています。著者のマヤ・ムーア氏は「双葉ばら園」の写真展をテレビで知ったとき、「この話を世界に伝えたい!」「福島県で失われたばら園の物語は、国境を超え、人種を超え、さまざまな感情を共有できると直感した」と語ります。
日本語版を出版するにあたり、序文は日本を代表する脚本家・倉本聰氏に寄稿いただきました。また、日本語版に先駆け2014年に出版された英語版にいただいた、元駐日アメリカ合衆国大使(2009~2013年)ジョン・V・ルース氏の寄稿も掲載しています。2014年刊行の英語版は世界バラ会連合世界バラ会議2018優秀文学賞を受賞。本書は待望の日本語版です。
失われた「双葉ばら園」
この本の舞台となる「双葉ばら園」は、福島県双葉町にあり、放射能汚染で充満している地域のほぼ中心にあります。海から8㎞のところにあったバラ園は、津波の被害からは逃れられても、目に見えぬ猛毒の放射能汚染からは、免れることができなかったのです。ほぼ50年にも及んで愛情こめて育て上げた「双葉ばら園」は、3月のあの悲劇の日以来、突然、その存在価値を奪われたのでした。本書で書き綴られた話は、東日本大震災と原発事故から生じた幾多の悲劇の一例ですが、人々の心奥にある、決して消えないものを見つめ直す希望の物語でもあります。(本文「はじめに」より)
脚本家・倉本 聰氏による序文「バラ、今何を想う」
日本語版を刊行するにあたり、震災後の支援活動や演劇公演を繰り広げてきた日本を代表する脚本家・倉本 聰氏に美しい序文を寄稿いただきました。
一輪の花にも一輪の生命(いのち)がある。 一本のバラにも一本の生命(いのち)がある。倉本 聰 (序文「バラ、今何想う」より抜粋) |
著者プロフィール/マヤ・ムーア(MAYA MOORE)
元NHK-BS「ワールドニュース」、「ウィークエンド・パリ」、「アジア・ナウ」のキャスター、TBS「サンデーモーニング」、HTB「イチオシ!」のコメンテーターも務めた。さらに白百合女子大学で客員講師を経て、現在アメリカン・スクール・イン・ジャパンと岩手県大船渡市の小学校を結ぶスカイプバーチャル英語教室(TVEC)にも力を注いでいる。夫と2人の子と東京在住。
失われた福島のバラ園 The Rose Garden of Fukushima